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特集SPECIAL FEATURE

絵コンテを読む。

2023.10.27

アニメーションを制作する上で欠かせない、基礎となり”設計図”とも呼ばれる「絵コンテ」。
スタジオジブリでは、ひとつの作品につき何百枚と描かれる絵コンテを1冊の本にまとめた「絵コンテ全集」を出版しています。
最新作『君たちはどう生きるか』の絵コンテ発売に合わせ、宮﨑駿監督の描く絵コンテについてご紹介いたします。

スタジオジブリ絵コンテ全集 ①『風の谷のナウシカ』から㉓『君たちはどう生きるか』まで

絵コンテとは

絵コンテには、絵やストーリー、キャラクターの性格や心情、動き、台詞、カメラの動き、カットの長さなど、映画を作る上で必要な情報が書かれています。特に宮﨑監督の絵コンテは、拡大するとそのままレイアウト(※)として成立してしまいそうなほど、詳細に書き込まれた絵コンテとなっています。
スタッフはその絵コンテを基にして、1本の映画を作っていきます。

※レイアウトについて、詳しくはこちらををご覧ください

『風の谷のナウシカ』のオープニング(『風の谷のナウシカ』より)
劇中では語られることのない詳細な設定を書くことで、スタッフと世界感のイメージを共有する

キャラクターの内面、演出を伝える

作画スタッフへの指示として、直接的な動きや表情だけではなく、キャラクターの心情や内面を説明していることも少なくありません。
そうすることで、そのシーンを描くそれぞれのアニメーターの絵に”気分”がうまれるのです。

「このおダンゴを両親にたべさせれば…」(『千と千尋の神隠し』より)
ひそかな期待を胸に秘め、河の神様にもらったダンゴをみつめる千尋
「この人 狂気や熱情が好きなんです」(『天空の城ラピュタ』より)
ただの睨み顔ではない、何かを謀るような、見据えるような表情に
「マヒト、青サギがうそを言っているのではないと判る」(『君たちはどう生きるか』より)
お互いに信用していなかった眞人と青サギだったが……

また、宮﨑監督の絵コンテは「演出」に関する比重がとても多くなっています。
表面的なことだけでなく、そのシーンに込められた意味を、あらゆる表現を使ってアニメーションで示しているのです。

ポルコとカーチスの決闘(『紅の豚』より)
実際に決闘している2人ではなく、観客側の表情を描くことで、決闘の優劣やマンマユート団の心情などを説明している
瀕死のアシタカに、サンが干し肉を与える(『もののけ姫』より)
硬い干し肉を力なく食べる様子から、生きようとするアシタカの意志が伝わる

画面処理についての指示

もちろん絵を描くスタッフ以外にとっても絵コンテは重要な資料です。
そのカットをどう動かしてほしいのか、最終的にどう見せたいのか、宮﨑監督の頭の中にある“アニメーション”を、絵コンテから読み解くことができるのです。

冒頭の海底シーン(『崖の上のポニョ』より)
右上から左下へと移動するカメラワークなどが指示されている
また、『崖の上のポニョ』以降の絵コンテはカラーで描かれており、より見ごたえのあるものに
二郎の鳥型飛行機の飛行シーン(『風立ちぬ』より)
絵コンテ用紙を横にして、左から右へと飛行機が飛んでいくカットが目一杯描かれている
空賊連合の編隊飛行のシーン(『紅の豚』より)
飛行艇・プロペラ・背景を、撮影によって別々に動かすという、当時の技術では難易度の高い指示

こんな楽しみ方も…

劇中では直接的に語られていないキャラクターの設定や心情なども、絵コンテから垣間見ることができます。
また、カットやパートの合間には監督の落書きのようなものも……
そういったものを探してみるのも、絵コンテの楽しみ方のひとつかもしれません。

実はこんな風に思っていたトトロ(『となりのトトロ』より)
ハウルは「魔王になる素質のある男」!?(『ハウルの動く城』より)

ジブリ美術館1階常設展示室

アニメーション制作の裏側を覗き見ることができる絵コンテ。
作品に対する新たな発見はもちろん、映画を観たときに知らず知らずのうちに受け取っていた巧みな演出意図に気づくことができるかもしれません。
読み物として、アニメーション制作の資料として、ぜひお気に入りの作品を手に取り、じっくりと読んでみてください。

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